宅建試験の解き方

宅建試験の解き方について、実際の対策事例を元に「三巡解き」という方法を紹介しつつ、試験本番中にやると良いことについて解説していきます。

三巡解きとは

三巡解きは、宅建試験本番2時間の中で問題を三周するという解き方です。この方法を取る一番の目的は、「考えれば答えが出せる」問題を確実に取りにいくことです。

試験が始まってからは、どうやっても知識を増やすことができません。そのため、「考えても分からない」問題にかける時間をできるだけ減らし、「考えれば答えが出せる」問題への吟味に回すことで自分の力を最大限引き出すことが、本番でできる数少ない努力だと言えます。これから説明する三巡解きは、これを効率的に行う解き方になっています。

個人差はありますが、解き方のスタイルが確立していない方は、まずはこの三巡解きを真似してみて、必要に応じて自分なりに改良していくことをお勧めします!

【一巡目】 全ての問題を見て、難易度別にマークを付ける(目安: 30分)

気持ちを落ち着けて冷静になる

試験が始まって最初にするべきことは、「問題全体を見る」です。全体の難易度を掴めるほか、どこにどんな問題があるかを何となくインプットしてから解き始めることで、冷静な気持ちで試験を始めることができます。

また、途中で分からない問題があった時も、「他に解けそうな問題が後ろにある」ということを最初に確認してくことで、その問題を一旦捨てて次に切り替える踏ん切りがつきやすくなります。

選択肢のメモを取る

一巡目では、一問目から順に問題を見ていきますが、その際に文章選択肢それぞれの正誤についてのメモを残していきます。例えば、以下の例ではア、イが誤りで、ウが正しい内容となっています。もし一巡目の時点で、「ア、イが誤りでウが正しい!」と自信を持って判断できた場合、〇と×の印を残しましょう。もし正誤の判定に自信が無かった場合、一旦〇?×?と書いてからすぐに次の問題に移りましょう。 全く正誤が判断できなかったものについては、マークを付けずに飛ばします。

宅地建物取引業者Aが宅地建物取引業法第37条の規定により交付すべき書面(以下この問において「37条書面」という。)に関する次の記述のうち、同法の規定によれば、誤っているものの組合せはどれか

×?→ ア Aが売主として宅地建物取引業者Bの媒介により、(中略)することができる。
×→ イ Aがその媒介により、(中略)必要はない。
〇?→ ウ Aが売主としてCとの間で(中略)37条書面にその内容を記載しなければならない。

1. ア、イ
2. ア、ウ
3. イ、ウ
4. ア、イ、ウ

平成26年 問42 (一部略)

このようなメモを取ることで、二巡目でどの問題に時間をかけるべきかについての優先順位を付けます。 〇?×?を付けたものに関しては、現時点で正誤について目星がついておりもう少し考えれば答えが決められそうなので、マークを付けられなかった問題より優先して二巡目で取り組むべきだと言えます。

まとめると、一巡目でやっているのは「A確実に分かる B考えれば分かりそう C考えても分からなさそう」の三段階に各問題の選択肢を分類して、二巡目以降で取り組むべき問題(=B)を炙り出すという作業になります。

問題文で問われていることにマークを付ける

一巡目では、上で述べた〇×メモのついでに、何が問われているかを間違えないために問題文にマークを書き込んでいきます

まず一つ目として、選ぶべき選択肢が「正しいもの」か「誤っているもの」かをハッキリさせる必要があります。リード文冒頭の該当箇所を見つけ、鉛筆で分かりやすく囲うことで強調しましょう。全部にマークするのが面倒な場合、「誤っているもの」を問われている場合だけ丸で囲む、というのも効果的でしょう。

例えば、以下のように「誤っているものの組合せ」を求められる問題も時折見られるなど、宅建では出題のされ方にバリエーションが見られます。

宅地建物取引業者Aが宅地建物取引業法第37条の規定により交付すべき書面(以下この問において「37条書面」という。)に関する次の記述のうち、同法の規定によれば、誤っているものの組合せはどれか

ア Aが売主として宅地建物取引業者Bの媒介により、(中略)することができる。
イ Aがその媒介により、(中略)必要はない。
ウ Aが売主としてCとの間で売買契約を成立させた場合(中略)37条書面にその内容を記載しなければならない。

1. ア、イ
2. ア、ウ
3. イ、ウ
4. ア、イ、ウ

平成26年 問42 (一部略)

このように「誤っているもの」を答える場合でも、選択肢は「正しいもの」パターンの出題と同じ形式なので、気を抜くと問題文を読まずに正しい選択肢の組合せを選びにいってしまうことが大いにあり得ます。 そのようなミスをなくすためにも、鉛筆で予め強調しておくという作業は単純ながら重要な役割を果たしています。

二つ目に、リード文中には選択肢の正誤に直結する重要な前提が書かれている場合があるので、そちらも分かりやすく強調しておくべきです。これは、ある程度経験を積む中で身に着けるものではありますが、一例を紹介するので他の分野での参考にして頂ければと思います。

宅地建物取引業者が建物の貸借の媒介を行う場合における宅地建物取引業法第35条に規定する重要事項の説明に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、説明の相手方は宅地建物取引業者ではないものとする。


1. 当該建物が住宅の品質確保の促進等に関する法律第5条第1項に規定する住宅性能評価を受けた新築住宅であるときは、その旨を説明しなければならない。
2. 当該建物が既存の建物であるときは、既存住宅に係る住宅の品質確保の促進等に関する法律第6条第3項に規定する建設住宅性能評価書の保存の状況について説明しなければならない。
3. 当該建物が既存の建物である場合、石綿使用の有無の調査結果の記録がないときは、石綿使用の有無の調査を自ら実施し、その結果について説明しなければならない。
4. 当該建物が建物の区分所有等に関する法律第2条第1項に規定する区分所有権の目的であるものであって、同条第3項に規定する専有部分の用途その他の利用の制限に関する規約の定めがあるときは、その内容を説明しなければならない。

令和元年 問28(一部略)

この問題の答えは4ですが、1と2が間違いである根拠はリード文中の赤字「賃借の」という部分以外にありません。このように、細かい要素が直接的に正誤に影響を与えることがあるため、問題文へのマークは重要な役割を担っています。こういった例としては、業法の取引相手(宅建業者であるかどうか)と取引態様(売買か交換か賃借か)などが良く挙げられます。

一巡目でやるこれらの作業は、「あまり緊張しない」「問題文は読めば分かるのでわざわざマークしない」といった理由から人によっては不必要に感じるかもしれませんが、試験時間が間に合わなかったりケアレスミスが多かったりしがちな方には効果的でしょう。

【二巡目】 悩んだ問題を吟味していく (目安: 80分)

一巡目では、各問題の選択肢の正誤について、〇×、〇?×?、マークなしの三種類に分類しました。二巡目では、再び問題の先頭に戻り、〇?×?として保留にした問題を中心に時間をかけて吟味していきます。繰り返しになりますが、〇?×?は「考えれば分かりそう」という問題であり、これらに時間を十分にかけることで自分の能力を最大限に発揮することができるはずです!

吟味した結果選択肢の正誤が確定したら、文章選択肢のマークを〇×にアップデートしましょう。また、問題自体の答えが一つに定まったら、設問選択肢の横にチェックマークや〇などを付けておきましょう。

宅地建物取引業者Aが宅地建物取引業法第37条の規定により交付すべき書面(以下この問において「37条書面」という。)に関する次の記述のうち、同法の規定によれば、誤っているものの組合せはどれか

×? ×→ ア Aが売主として宅地建物取引業者Bの媒介により、(中略)することができる。
×→ イ Aがその媒介により、(中略)必要はない。
〇? 〇→ ウ Aが売主としてCとの間で(中略)37条書面にその内容を記載しなければならない。

1. ア、イ
2. ア、ウ
3. イ、ウ
4. ア、イ、ウ

平成26年 問42 (一部略)

宅建試験終了後の当日中には各社予備校が解答速報を出すので、自己採点をしやすくするという目的でもメモを取っておく必要があります。どの番号の選択肢を選んだかメモをし忘れてしまった時も、文章選択肢の正誤についてのメモが残っていると試験中の思考過程が再現しやすくなり思い出すことができます。

どこの予備校が解答速報を出しているのかついては、以下のページで一覧にまとめています。

【三巡目】 分からなかった問題の答えを決め打ちする (目安: 10分)

運を天に任せる

二巡目でほとんどの問題の解答を決めたら、三巡目として、マークを付けずに飛ばした選択肢に再び戻ります。一般に、分からない問題の中には「難しいのでよく考える時間が必要なもの」と「自分の勉強・知識不足で判断しきれないもの」の二つがあると言えますが、マークを付けなかった問題は後者のような太刀打ちできないものだと考えられます。この場合、ここからどれだけ考えても仕方がないので、潔く答えを決め打ちするという思い切りが大事です。

解答用紙へのマーキング

最後に残った時間で、解答用紙へのマーキングをまとめて行います。これにはメリット・デメリットがあります。

メリット

  • 順番にやるのでマークがずれることが無い
  • 二巡目でマークをしないので問題を解くことに専念できる
  • 塗ったり消したりする時間を節約できる

デメリット

  • 焦った結果、マークが試験終了までに終わらない可能性がある

余程焦っていなければ最後にマークをする数分すら足りないという状況にはなりづらいと思うので、三巡目にまとめて解答する方法に慣れることをおススメします。

当サイトの内容、テキスト、画像等の無断転載・無断使用を固く禁じます。